SSブログ

「火星の人」アンディ・ウィアー著 小野田和子訳 [感想文:小説]

 これは、シンプルでストレートな、「宇宙開発新時代の傑作ハードSF」(文庫裏表紙から)。読み終わると、もう火星へ行けそうな気がしてくる。ずっとわくわくする。
 物語はいきなり災厄から始まる。
舞台は火星。3度めの有人火星探査ミッション「アレス3」の6人のクルーは、強烈な砂嵐に遭遇し、ミッションを中止、帰還しようとする。
しかし、不慮の事故が襲い、マーク・ワトニーだけが火星に取り残されてしまう。ミッションの物資はあるものの、通信機器は破壊されてしまった。薄い大気と酷寒の苛烈な環境に孤立無援で、マークはサバイバルを始める。
次々と起こる不測の事態。それをマークは、知恵と勇気とユーモアでさばいていく。
それは、地球で育ったいくつかの最良の部分がマークという個人にパッケージングされて、生還を掛けて火星に挑む、ミッション・インポッシブルだ。
 物語は、マークの科学的知識が大きな鍵となるのだが、読んでいると、結局、科学とは勇気が素(もと)なんじゃないかと思えてくる。
そして、勇気の物語が面白く無い訳はない。
それから、独特のユーモアを醸しだす、マークのキャラクターも魅力だ。読めばわかるが、「見て見て! おっぱい!-> (.Y.)」のくだりは最高だ。
この小説にはSFっぽい駄法螺的展開はないが、それでも驚天動地は用意されている。センス・オブ・ワンダーがたっぷり楽しめる。
文庫の巻末に収録された中村融氏の解説では触れられていなかったが、映画「エイリアン」のキャッチ・コピーのパロディもある。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。