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「レッドタートル ある島の物語」マイケル・デゥドク・ドゥ・ヴィット監督 [感想文:映画]

 灰緑の巨浪が逆巻き、轟く。男が難破し、散り散りに波間を転がされ、絶え入りながら、無人島に漂着する。
茫漠に浮かぶ孤島で男は緋色の海亀と契る。
「雨月物語」の失われた一篇のような映画。そして、孤独の、描かれたものが動くアニメーションの孤独と、アニメーションを見る孤独の映画。
この映画に象徴を読む者は愚かだろう。寓意を拾うものは粗忽なのだ。ただ線と色彩の中に、男と女の姿が感じられる。
こんなアニメーション映画を観ることができた幸福を寿ぐ。この映画は、歴史よりも前に、どことも知れぬ何処か、心の在処にもっとも近い場所で、ずっと上映され続ける。
音楽と音は少し陳腐。

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