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「地獄のハイウェイ」ロジャー・ゼラズニイ著 浅倉久志訳 [感想文:小説]

 ポスト・アポカリプス・アクション・SF超大作、堂々のノヴェライズ。なんて言ってみたくなる快作。しかしあくまでもオリジナル作品で、1969年のクレジットが記されているから、おそらく「核戦争後」の荒廃した世界を舞台にしたアクション物の先駆的作品になるのだろう。今年(2015年)「マッドマックス 怒りのデスロード」という傑作で甦ったジョージ・ミラー監督の「マッドマックス」シリーズや、ジョン・カーペンター監督の「ニューヨーク1997」などに影響を与えているのではないだろうか。憶測だが。
 近未来、核戦争後のアメリカが舞台だ。世界は崩壊し、大規模な気候変動も起きている。人類は大半が死に絶え、合衆国は失くなり、北米大陸にはカリフォルニアとボストンの二つの国があるのみ。そのボストンでペストが発生。追い詰められた人々はカリフォルニア国へ助けを求める。放射能に汚染され、想像を超えた「呪いの横丁」と化した大陸横断を完遂し、ボストンにペストの血清を届けるために、冷血無頼の悪党にして抜群のドライバー、ヘル・タナーに白羽の矢が立てられる。特別製の装甲車を駆って、果してタナーは地獄の道を走り抜けられるのか。
物語はテンポ良く、軽快だ。会話がやや古臭いのはご愛嬌。「あたりき」なんて言い回しは微笑みで迎えましょう。殆ど異世界化した自然描写が見物だ。ゼラズニイの腕が冴える、その荒涼感がたまらない。主人公のタナーは最後まで悪党を貫き「ブレない」ので爽快だ。

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