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「浦沢直樹の漫勉 さいとうたかを」NHK Eテレ [感想文:その他]

 「ゴルゴ13」のさいとうたかを氏が、自身の漫画を描く様子を録画した映像を見ながら、「20世紀少年」の浦沢直樹氏と対談する番組。このシリーズでは、かわぐちかいじ氏、山下和美氏、藤田和日郎氏も登場したらしいが、見逃した。残念。
 番組中、さいとうたかを氏がデューク東郷を描くシーンと鬼平犯科帳の鬼平を描くシーンがあるのだが、これが驚愕だった。さいとう氏は大まかなアタリをつけただけで、いきなりゴルゴの太い眉毛から描きだすのだ。鬼平もしかり。眉毛から描く漫画家は多いらしいと聞いたが、マジックペンのマッキーでぐいと描きだすのを実際に見ると驚く。その後さいとう氏のペンは、まるで白紙からゴルゴの顔を彫り起すように描いていく。
「さいとうたかをはゴルゴの目だけを描いている」という都市伝説めいたものは事実無根だった。さいとう氏自身がその噂をどこから出たのだろうとぼやいていた。
おそらく、さいとう氏が作りあげた協業体制がその噂を生むことになったのだろうが、その協業体制への指示の過程も番組では見ることができて、原稿への記号めいた書き込みから緻密な背景が仕上がってくるのだ。この辺りは映画の絵コンテなどによる作業に近い感じだ。さいとう氏は、ネームと呼ばれるセリフ、コマ割り、アングルなどを考え、主要人物を描き、最後に仕上げを行なう。
仕上げでもビックリさせられる場面があった。すでに出来上ったコマに、さいとう氏はサインペンやマッキーで擬音を一気に描き込んでいくのである。間違ったらとか、これでいいのかという迷いは無い感じだ。修正することもあるのだろうが、それでもあの様子には、さいとう氏にはすでに「見えている」感じがした。ゴルゴの顔を描く時もそうだが、さいとう氏にはイメージがもう見えているのではないだろうか。
 番組中、さいとう氏が描きながら口を動かしていて、浦沢氏にセリフを喋っていると指摘されるが、さいとう氏はそんなの意識したことない、と答える場面がある。そのさいとう氏の集中とその時さいとう氏の顔を内側から照らしていた輝きが、信じられないほど美しかった。
漫勉の再放送を希望。

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